近赤外日射反射率(NIRSR)と遮熱塗料との関係【2025年12月18日更新】|静岡県沼津市・三島市・富士市・静岡市の外壁塗装・屋根塗装専門店 塗替え情報館
【2025年12月18日更新】
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本日は近赤外日射反射率(NIRSR)と遮熱塗料の関係性について述べていきます。
近赤外日射反射率、略してNIRSR (Near-Infrared Solar Reflectance) は、物体表面が太陽光に含まれる近赤外線をどの程度反射するかを示す指標です。
この概念を理解するためには、まず太陽光のスペクトル構成を把握することが重要です。
1.近赤外日射反射率(NIRSR)とは何か
①太陽光のスペクトル構成
地球に降り注ぐ太陽光は、様々な波長の電磁波から構成されています。これらは主に以下の3つの領域に分けられます。
紫外線 (UV: Ultraviolet)
約3%を占めます。波長が短く、日焼けや塗膜の劣化を引き起こします。
可視光線 (VL: Visible Light)
約44%を占めます。人間が色として認識できる領域で、物体を「見える」ようにします。
近赤外線 (NIR: Near-Infrared)
約53%を占めます。熱の主要な運び手であり、物質に吸収されると、そのエネルギーが熱に変換され、物体の温度を上昇させます。
太陽光のエネルギーの半分以上が近赤外線によって運ばれているという事実から、この近赤外線を反射することが、建築物への入熱を防ぐ上で最も重要であることがわかります。
②NIRSRの定義とメカニズム
近赤外日射反射率は、物体表面に入射した近赤外線のエネルギー総量に対し、表面から反射されたエネルギー総量が占める割合をパーセンテージ(%)で示したものです。反射率が高いほど、その物体は近赤外線を多く跳ね返し、熱への変換を防ぐ能力が高いことを意味します。
| 色 | 可視光反射率 | 熱吸収の主因(NIR吸収) |
| 白 | 高い | 低い |
| 黒 | 低い | 高い |
伝統的に、色は可視光線の反射率、すなわち「明るさ」によって決まります。
白い物体はほとんどの可視光線を反射するため明るく見え、黒い物体はほとんどの可視光線を吸収するため暗く見えます。
しかし、熱の観点から見ると、重要なのは近赤外線です。
一般的な塗料の場合、可視光線の吸収(=色)と近赤外線の吸収は強く相関します。
つまり、濃い色(可視光線を吸収する色)は、同時に近赤外線も吸収しやすいため、高温になりやすいのです。
2.遮熱塗料の核心:NIRSRの活用
ここで、遮熱塗料(Heat Reflective Paint) の登場です。
遮熱塗料は、この近赤外日射反射率を、特に濃色においても高めることを目的として開発された高機能塗料です。
①遮熱塗料の基本原理
遮熱塗料の核心的な機能は、「可視光線は吸収・反射して通常の色を表現しながら、熱源である近赤外線のみを選択的に効率よく反射する」 ことにあります。
この選択的な反射を実現しているのが、塗料の配合成分に含まれる特殊な顔料(Pigment) です。
一般的な濃色の塗料では、色を出すための顔料(例えばカーボンブラックなど)が、可視光線と一緒に近赤外線も大量に吸収してしまいます。
これに対し、遮熱塗料では、以下の2種類の特殊な顔料が使用されます。
高反射性顔料(フィラー)
主に白色や明るい色で使われる、近赤外線を強力に反射する特性を持つ無機顔料(例:酸化チタン)。
これは通常の塗料にも使われますが、遮熱塗料ではその粒子形状や表面処理を最適化することで、反射効率を最大化します。
近赤外線選択反射型顔料(色材)
遮熱塗料の鍵となる成分です。これは、特定の波長の可視光線は吸収して色を作り出しながら、近赤外線の波長域に対しては高い透明性または反射性を持つように設計されています。
(例:複合酸化物顔料(複合メタルオキサイド)など。これらの顔料は、従来の顔料に比べて、同じ色相や明度であっても近赤外線の吸収率が極めて低いのが特徴です。)
これらの特殊顔料を適切な樹脂(アクリル、ウレタン、シリコン、フッ素など)と組み合わせて使用することで、濃いグレーやブラウン、さらには黒に近い色であっても、従来の同色の塗料と比較して屋根や外壁の表面温度上昇を10°C〜20°C以上抑制することが可能になります。
②遮熱効果の波及とメリット
遮熱塗料が屋根や外壁に塗布され、高いNIRSRを発揮することで、建築物全体に複数のメリットが波及します。
建物内部の省エネルギー化(冷房負荷の低減)
最も主要なメリットです。
屋根や外壁の表面温度が抑制されると、熱が建物内部に伝導する量(熱貫流)が大幅に減少します。
これにより、夏季の冷房エネルギーの消費を大幅に削減できます。
特に、屋根直下の階層や工場・倉庫など天井高が低い建物では、その効果は顕著です。一般的に、15%〜30%程度の冷房負荷低減が報告されています。
塗膜・建材の耐久性向上
塗膜や屋根材(金属板、アスファルトシングルなど)が高温にさらされ続けると、熱による劣化(熱分解、膨張収縮によるひび割れ) が進行します。
遮熱塗料は表面温度を下げることで、この熱ストレスを軽減し、塗膜自体の長寿命化に貢献します。
ヒートアイランド現象の緩和
都市部で多数の建物が遮熱塗料を使用することで、大気中に放出される熱量(顕熱)が減少し、都市全体の気温上昇(ヒートアイランド現象)の抑制にわずかながら寄与します。
これは、クールルーフ(Cool Roof)技術の一環として、世界的に推進されています。
3.遮熱塗料の効果測定と評価基準
遮熱塗料の効果を客観的に評価し、製品間の比較を可能にするために、NIRSRは重要な評価指標として利用されます。
①測定方法と指標
遮熱塗料の性能は、単にNIRSRの数値だけでなく、その塗料が吸収した熱をどれだけ効率よく放射するかを示す熱放射率(Emissivity) も組み合わせて評価されます。
太陽光反射率(SR: Solar Reflectance)
太陽光の全スペクトル(UV、可視光、NIR)に対する反射率。
遮熱性能の総合指標として最も広く使われます。NIRSRが約53%を占めるため、NIRSRの値がSRの値に大きく影響します。
熱放射率(Emissivity)
物体が熱を放射(放出)する能力。反射できなかった熱を効率よく空気中に逃がす能力が高いほど、表面温度の上昇を防げます。
太陽光反射率指数(SRI: Solar Reflectance Index)
上記2つの指標を組み合わせて計算される総合的な冷却性能指数。
標準的な黒(SRI=0)と標準的な白(SRI=100)を基準として、数値が高いほど性能が高いことを示します。
日本では、一般財団法人日本塗料検査協会(JPIA)などが性能評価基準を定めています。
②実際の性能と課題
色による反射率の差
遮熱塗料といえども、色の濃さによる性能差は避けられません。
-
淡色系(白、ペール系): 従来の塗料でもNIRSRが高いため、遮熱顔料を使うことで、NIRSRが80%以上に達するものもあります。
-
濃色系(黒、濃グレー、濃ブラウン): 従来の塗料ではNIRSRが10%程度しかないものが、特殊顔料によって30%〜50%程度まで引き上げられます。この「引き上げられた差分」こそが、濃色における遮熱塗料の真価です。
汚染(汚れ)による性能低下
遮熱塗料の最大の課題の一つが汚染(汚れ、Chalking) です。
塗膜表面にチリ、ホコリ、煤などの汚れが付着すると、これらの汚れが太陽光(特に近赤外線)を吸収してしまうため、当初の高かったNIRSRが大幅に低下し、遮熱効果が薄れてしまいます。
このため、高性能な遮熱塗料には、低汚染性(セルフクリーニング機能など) も求められ、塗膜の耐久性や維持管理が重要な要素となります。
4.まとめ
近赤外日射反射率(NIRSR) は、太陽エネルギーの半分以上を占める熱を運ぶ近赤外線を効率よく跳ね返す、現代の省エネ建築に不可欠な特性です。
遮熱塗料は、このNIRSRを特殊な顔料技術によって最大限に高め、特に濃色においても熱吸収を劇的に抑えることを可能にしました。
その結果、冷房エネルギーの削減、建材の長寿命化、そして都市の熱環境改善に貢献しています。
建築物の高性能化と持続可能性が求められる今日、NIRSRの向上は、屋根・外壁の意匠性と機能性を両立させるための核心技術として、その重要性を増しています。
今後も、より高性能で低汚染な近赤外線選択反射型顔料の開発が進むことで、遮熱塗料の適用範囲はさらに広がっていくと考えられます。
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